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スタインウェイピアノ 販売・調律・オーバーホール

スタインウェイピアノ 販売・調律・オーバーホール

お問合せは0467-40-4639

コラム

中古スタインウェイについて

 
 日本ではヨーロッパやアメリカからたくさんの中古スタインウェイが輸入されています。その輸入量は90年代後半から2000年代前半の全盛期に比べると減りましたが、中古スタインウェイは現在も人気があります。人気の理由は新品より価格が安いこともありますが、年数を重ねて得られる音色を求めて購入される方も多くいらっしゃいます。 
 スタインウェイ社は160年以上の歴史がありこれまでに約60万台のピアノを作っています。私は100年以上経過したピアノを何台も見ていますが、それらは今も艶のある音色豊かなピアノもあれば、雑音や不良箇所が多く音階を保つことの出来ないピアノもあります。ピアノは、設置環境(温湿度の状態)、使用頻度、調整・オーバーホール等これまでの状況によって状態は様々です。

ピアノの温度・湿度による影響

 

 ピアノを構成する木材は温度・湿度の変化によって膨張と収縮を繰り返し、その影響によって響板等の木部や部品の接合部が割れたり剥がれてしまう場合があります。 特に古いタイプの響板は、使用されている塗料が現在の塗料より温湿度変化の影響を受けやすいため割れていることも少なくありません。 響板が割れていても雑音が発生していない場合もありますが、駒や響棒という箇所が関係する部分の剥がれがある場合は、雑音が発生していることが多くあります。
響板の割れは木材や樹脂を埋めて、駒や響棒の剥がれは再接着をして修理します。一、二箇所の割れや剥の修理が行われたピアノは良いのですが、修理箇所があまりにも多いピアノはこれまでの環境が良くなかった可能性が考えられます。そのようなピアノは見えない箇所にもトラブルを抱えている可能性が高いため注意が必要です。

 
(左 )響板を下から見た写真で、4本の左斜めに傾いている棒が響棒です ()上部に黒いギザギザがある部分が駒です。弦の振動は駒から響板に伝わります
 

 温湿度の変化は、鍵盤・メカニックにも影響を与えます。鍵盤や各メカニックは温湿度の影響により動きが鈍くなったり、鍵盤を下げる力が重く感じる等の問題を引き起こします。このような場合の多くは、メカニック部品の関節箇所が湿度により膨張して動きが悪くなることで起こります。逆に過乾燥の場合には木が収縮して部品の接合部が取れてしまうこともあります。カチャカチャと余計な音がする時は、何か部品が取れていたり、ネジが緩んでいたりする可能性があります。このようなメカニックの 不良を抱えたままの使用は、異常の無い部分に負担をかけて新たな不具合を発生させる可能性もあります。またそれらの問題は身体にも負担をかけることもあります。例えば重いタッチの状態で弾き続けると腱鞘炎になってしまう場合もあります。

 
(左)ジャックと(右)サポートフレンジという間接部品の動きを計測している様子 
 

ピアノのオーバーホール等による影響

 

 消耗部品である弦とハンマーは、使用頻度と経過年数に伴い交換が必要です。
弦は音を発する重要な部分なので、歪みが無く美しく張られている事が重要です。どの作業にも言える事ですが、弦を張る場合も良い音をイメージしながら心を込めて作業されることが重要です。弦の張り方が雑であると不況な響が出たり、音の伸びや鳴り方が悪くなってしまいます。弦の交換では、弦を巻いているチューニングピンも同時に交換する事が多く、その場合は交換前のピンより直径の太いピンを使用します。 チューニングピンはピン板という堅い木材に固定されていますが、90キロ前後にもなる弦の張力を保持する為にしっかりと固定されている必要があります。固定力が弱いと音が狂ってしまいますが、固定力が強過ぎても音を合わせづらい等の問題を引き起こします。適切なトルク(ピンの摩擦)を実現するためには、測定を行いながら細かい調整が重要です。

 
(右)弦を巻いて固定したチューニングピン (左)ピンのトルクを測るトルクレンチ
 

 弦交換に伴い、フレームを塗装することも多くあります。その際にフレームをピアノ本体から一度取り外すことが多く行われています。ピアノ本体とフレームは、年月を重ねてそれぞれが歪んだり伸びたり縮んだりを繰り返して馴染むことで、バランスの良い響きのあるピアノに成長します。取り外したフレームを再び正しくセットするのは多くの経験とノウハウが必要です。私は弦を交換する場合、必要の無い限りフレームを取り外さずに作業を行います。弊社の中古ピアノも、フレームを取り外さず作業が出来るピアノを仕入れの段階で選んでいます。

本体につけたままフレームを塗装している様子 
 
 弦以外に消耗部品交換で重要なのは、ハンマー交換です。ハンマー交換は、多くの経験と高い技術力の必要な作業です。ハンマーは羊毛でできていますが、針を入れたり、液体を注入しながらハンマー内部の硬さを調整して音色を整えます。ハンマーの音色調整には多くの作業経験とコンサート等において演奏家の要求から培った技術の蓄積が不可欠です。
ハンマーに針を刺して音の調整をしている様子 (写真は筆者です )
 
 
 
 

 中古ピアノを選ぶ場合、本体を構成する部品に問題が無いか、消耗部品の状態、交換されている場合は正しく交換されているか等が重要となります。それらの状態をあまり確認せず弾いた感触だけで決めてしまうと、購入後に思いもよらないトラブルが起きる子危険性もあります。また、 弾いた時に好みの音やタッチと違うと感じる場合は、その場で実際に調整を行ってもらう等、充分に納得して選ぶことがとても重要です。実際に少しの調整で全く印象が変わる場合もあります。反対に何をしても難しい場合もあります。 
 中古ピアノを購入する場合は、信頼出来る販売店、信頼出来る技術者への相談されることが望ましいです。